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ブルノ生活・3

ファイル 81-1.jpgブルノでの仕事は、先週と今週で大きな山を乗り越えた感じで、あとは、最終仕上げと実際に上演をする上で必要な、テクニカル的な修正を残すだけになりました。プレミアを前に、こんな余裕を持って、自分の仕事の終わりが見えたのも初めてなことで、それもこれも、ラドスト劇場の工房の方々の惜しみない協力あっての事だと思います。仕事に余裕ができてきたので、ブルノでの生活も、劇を見たり、人に会ったり、少しずつではありますが、仕事以外のことも楽しんでいます。いい劇を見ることができたり、心温まる出会いがあったり、色々とありましたが、最近、今回のブルノ生活で一番貴重な体験がありました。

ファイル 81-2.jpgある日、工房に昼食から戻ると、工房の方々全員が一同に、一つの机を囲んで、真剣なまなざしで何かをやっていました。その中心には、見たことがない男性が座っていて。その男性の見た目は、サンタクロースのような、(背が高いですが)ホビットのような外見で。一体何をしているのだろう?と近づいてみると、沢山の彫刻刀やナイフを工房の人たちが、試し彫りしていたのです。

この男性は彫刻家で、たまに、フラリとアポなしで劇場の工房に訪れ、自作の彫刻刀やナイフを売って、またサラリと帰っていくらしいのです。工房の方々は、彼自作の彫刻刀を使っていて「既成のものより、本当に使いやすいから、由未も買ったら?」と薦められ、試し彫りをしてみると本当に使いやすい。「おいくらですか?」と男性に尋ねると、「んー、1本100コルナ(440円ぐらい)」彫刻刀もサイズも大小あり、柄の部分なども、持ちやすいように形に彫られていて…。「安すぎませんか?」と聞いたら、「おれはね、商売が下手なんだ。テヘッ」みたいな感じで笑われて。

工房で働くダナさん曰く、「私は、17年間ラドスト劇場の工房で働いているけど、ドボジャークさん(この男性の名前)に会ったのは、今日で3回目なんだ。前に来たのは、たしか7年ぐらい前だったし、本当に、たまーにしか来ない人だから、彼に会えたのは本当にラッキーだったね。」と。

山奥に一人で生活しているらしいドボジャーク氏。深緑のコートと、自然素材でできた布製のリュックと、自作の杖(柄が鳥の顔)を持つと、もう、リアル・ホビットにしか見えない方で。本当に出会えた事、ましてや、仕事道具の中でかなり大事な彫刻刀を、上質な上に破格すぎる値段で購入できたのは嬉しい体験でした。工房の方々も、「クリスマス・プレゼントだね(サンタっぽい見た目の、神出鬼没なドボジャーク氏に会えたこと、彫刻刀が買えたことを含めて)」と笑って話していました。

劇場のシステムについて書こうと思っていたのですが、ドボジャーク氏の出会いが個人的には衝撃過ぎだったので、システムについては、次回へ持ち越したいかと思います。

(写真は、「親指姫」にでてくる魔法使いと、ドボジャーク氏)


ブルノ生活・2

ファイル 80-1.jpg前のNews記事に書いたのですが、今回の「親指姫」は、私にとってブルノで長期滞在を必要とする、3個目のプロジェクトです。

長期滞在といっても、ずっとブルノに滞在しているわけではなく、現在のプロジェクトは、平日3、4日はブルノ、週末はプラハと、行ったり来たりしています。宿泊施設も、プロジェクトごとに状況は異なります。今まで劇場でやってきた仕事をテーマに、もしエッセイ等を書く機会があったら、「宿泊」は、ある意味で一章を占められるほど色々な経験があったなと。

ファイル 80-2.jpg例えば、ブルノ生活とは関係ないですが、最近、講義をしたオストラバは、博物館の最上階にあるゲストルームに宿泊しました。守衛さんもいない博物館で(セキュリティー・コードはありましたが)夜の博物館に、私一人きりになりました。「なんか、映画で、こんな状況のやつあったなあ?」と、夜の、一人貸切博物館を、それなりにエンジョイしました。チェコに住み始めた頃(5年前)の私だったら、絶対に怖がっていたと思うのですが、劇場で、一人で寝泊まりしたり、一人ではなかったけれども、廃墟の城(演劇フェステバルの準備のため)に寝泊りしたりしているうちに、だんだんと逞しくなってきたのかもしれません。

ブルノでの最初のプロジェクト「浦島太郎」は、劇場で寝泊りしていました。この件に関しては、本当に沢山のエピソードがあるので、いずれ、機会があれば書くことにしたいと思います。2個目のプロジェクト「金の紡ぎ車」は、役者の友人の家と、演出家のゾヤさんの家を交互に寝泊りさせてもらいました。そして今回の「親指姫」は、念願の劇場が所有するゲストルームの個室を頂きました!これほどの、贅沢はないのですが、色々とおもしろかったので、少し書けたらなと。

部屋を管理する人に案内されて来た部屋は、30平米ぐらいはあり、ベージュの絨毯が敷き詰められ、窓が2つ、清潔感があり、簡易キッチンがあり、一人用のソファーベットと、とてつもなく巨大なソニーのテレビがポツンと置かれていました。「どうぞ」と鍵を渡され、管理人は去って行き、一人残されると、なぜだか、村上春樹氏の小説にでてきそうな、シュールな部屋だなあと感じました。キッチンがあると思ったら、キッチンのような形をしている台所。コンロのあるべき所にコンロはなし。食器も冷蔵庫もなし。あげくのはてには、水もでない(自分で水道管を開けました)所からスタートしました。それでも、清潔感のある、お風呂トイレ付きの個室はありがたいもので、現在は、椅子と机だけは欲しいと頼み貸して頂けたので、かなり快適に住んでいます。自炊ができないのは少し難点ですが…。

次回は、劇場のちょっと、金田一少年の事件の舞台になりそうなシステムを書きたいかなと思っています。

(写真は、現在滞在中のゲストルームと、以前寝泊りした廃墟の城です)


ブルノ生活

ファイル 79-1.jpgブルノでの生活について書くにあたって、生活や、交通や、劇場や交友関係よりも、まず、第一に書かなくてはならないのは、ブルノ在住の演出家、ゾヤ・ミコトバー(Zoja Mikotová)氏についてだと思うのです。

今回の「親指姫」のように、長期滞在(2-3ヶ月)で、ブルノで製作するプロジェクトは、私にとっては3作目で、その、全ての作品の演出家はゾヤさんです。ブルノという街が、私にとって、チェコでプラハに続く、第二の故郷になりつつあるのも、ゾヤさんが仕事という縁で私をブルノに招いてくれるおかげでもあります。実際、劇場関係者の知り合いも、プラハよりブルノのが断然多いのも現状です。

今まで、ゾヤさんと組んでした仕事は、「TaBALADA(姨捨山)」「浦島太郎」「YODAKA」「金の紡ぎ車」「金のさかな」、そして現在製作中の「親指姫」で、6作品目になります。

そんな、ゾヤさんとは、どんな方なのか?

国民劇場でも演出作品がある、大御所演出家です。演劇・子供向けの演劇・人形劇・聴覚障碍者向けの演劇、全ての分野で、第一線で活躍しています。現役の演出家でありながら、JAMU(ヤナーチェック芸術アカデミー大学)でも教鞭をとっています。以前にも少し書きましたが、聴覚障碍者演劇学部を設立した第一人者でもあります。また、ゾヤさんは聴覚障碍者向けの演劇スタイルとして、独自の演劇メソッド「動く演劇」を作り出した方でもあります。

本当に多忙な生活を送っていて、チェコ(以外でも仕事されていますが)全土の劇場を回り演出しつつ、コンフェレンスにも参加しつつ、大学でも教えつつ、自身で演出した作品のオーガナイズも時にはしつつも、時間が少しでもあれば、おもしろそうな演劇やコンサートを見つけ、どこへでも飛んでいきます。本当にアクテイブな方です。演劇が大好きという気持ちが、本当にいつも伝わってくるのです。

私より断然忙しく、責任のある仕事をしている彼女の姿を見ていると、自分が仕事でストレスを抱えていることが本当に恥ずかしくなりますし、仕事の忙しさで仕事しか見えてない自分もダメだなと感じたりします。

師のようであり、共に戦える同士のようであり、時には母のようであり、心を許せる友人であり、一人の女性として憧れ、尊敬できる存在です。肩を並べて一緒に仕事をできるような方ではないのですが、この人と一緒に作れるのであれば、多少の無理と犠牲を払ってでもいいもの作りたいと思えるのです。

なんだか、Newsで書くことでもないかなと。無駄に長くてなってしまいました。そんな、ゾヤさんと製作している6作品目「親指姫」。小さな女の子の冒険話です。プレミアは1月11日です。沢山の方々に見てもらえることを願って、全力で製作中です!


「親指姫」リハーサル開始!

ファイル 78-1.jpg「親指姫」のリハーサルが始まりました。
4月頃から、アイデアを考え始め、8月の後半には、劇場でデザインの発注をして、その間にも色々なプロジェクトに関わってきましたが、昨日より「親指姫」のリハーサルが始まり、準備してきたものが一つの演劇という形に生まれ変わろうとしています。

私自身にとっては、「親指姫」のプロジェクトは、今までで舞台美術家として関わった中で、一番規模の大きいもので、大道具も小道具も人形も衣装も製作するプロ達がいる劇場での仕事。人形の製作なんかは、今まで自分で全部作っていたので、デザイン画で思った形を他者に伝えるのが不慣れで色々と大変でした。自分だったらこう作るけど…、といった部分など。もちろん、妥協はしていませんが、やはり作る人それぞれの個性が少しでてしまって、それを今どう一つにまとめるかも課題です。

そう、その「個性」がおもしろくも、難しいのです。

働いている人たちの個性もわからないまま、仕事をふるのは至難の技で、数ヶ月一緒に働いてみて今だからわかることも一杯で。頭ごなしに、自分のデザインを押し付けたいとは思わないし、個々に持ついい部分があればぜひ取り入れたいとも思う。次回にこの劇場で働けるチャンスがあるのであれば、絶対にもっと上手く作戦がたてられるなと思ったり。

それでも、リハが始まる前から感じる良いエネルギーは嬉しいもので。
夏から続く全力疾走状態の生活で一時期は、本当に心も身体もヘトヘトな感じでしたが、不思議と今は心が弾んでいて悪くない感じです。ちらほら、ブルノ生活も含めて、これからNewsで書いていこうかなとも思ってます。


オストラバ講義

ファイル 77-1.jpgオストラバの講義は終わりました。
結果は自爆です。これほどに、自分に負けてしまったのも久しぶりだなーと開き直れるぐらい。参加者は、おもしろかったと言ってくれましたが、それもこれも優しいチェコ人が参加者だったのです。きっと、90分かなりキツかったと思います。

講義後、一人で夕飯を食べていて(飲まずにはいられませんでした…)、よくわかりませんが、初めて剣道の試合をした時のことを思いだした。勝ったか負けたかも覚えていませんが、なんかただガムシャラに竹刀を振ってたあの感じ…。自分も空間も時間も統制できてない、あの感じ…。沢山の意味で、経験がもっと必要だなと痛感しました。

言い訳は、講義直前にテレビ局が来て取材があったり、ドキュメント用にビデオを何台か仕込まれたりで、落ち着いた心でできなかったことです。でも、そんな事聞きに来てくれた方々には関係のないことだし、もっと精進しなければいけません。

次は、Radost劇場で、1月11日プレミア予定の「親指姫」に全力投球です!11月も半分ぐらいそうでしたが、12月からは本格的にブルノ生活スタートです!


「Písně, básně, balady 」プレミア無事上演終了しました!

ファイル 70-1.jpg2012年11月18日、無事に「Písně, básně, balady 」プレミア上演終了しました!プレミアは、嬉しいことに劇場のキャパを越えた観客が来てくれました!写真は、上演直後のもの。(聴覚障碍者の拍手は、両手を星のように?ヒラヒラ振ります)次回上演は、11月後半にスロバキア・二トラで開催される聴覚障碍者演劇フェステバルにて、Studio Martaでは、1月7日、8日です。ブルノへお立ち寄りの際はぜひ!

また、上演後、ヤナーチェック芸術アカデミー大学(JAMU)の聴覚障碍者演劇学部の設立20周年を祝う催し物も開かれました。20年間で巣立った卒業生達と、その学科を0から作り続けてきた教授であり、演出家のゾヤさんの姿を見れて、なんだか本当に嬉しくなりました。改めて、凄い方と仕事を一緒にさせてもらえているんだなと思いつつ、このプロジェクトに参加できて心から良かったと感じました。

「Písně, básně, balady 」の余韻に浸りたいところですが、まだまだ色々と控えています。。次は、11月22日(一般向け)23日(高校生向け)に、オストラバの博物館で開かれる講義の準備をしなければいけません。人生初のチェコ語での講義です。ひゃー。聞き手にとって苦痛にならないよう頑張らなければです。

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「Písně, básně, balady 」プレミア公演!

ファイル 69-1.jpg2012年11月18日18時より、Studio Marta劇場(ブルノ)にて、舞台美術、人形・仮面製作、衣装デザイン担当した「Písně, básně, balady]がプレミア上演されます!

この演目は、すでに上演されている「金の紡ぎ車」の劇場用リメイク版になっています。演出家ゾヤ・ミコトバー氏、音楽は、『チャンキショー』などで有名な、ズデネック・クルカ氏、ドラマトルグは、ベロニカ・ブロウリィーコバー氏。ヤナーチェック芸術アカデミー大学(JAMU)の聴覚障碍者演劇学部の生徒を中心に、プロの役者も参加してかなりの大人数でのパフォーマンスです!

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聴覚障碍者向けの演目ですが健常者の方も一緒に楽しめるよう演出され、また、ライブ音楽で上演されます。再演、再構成にあたり、面白いものになったと思います!ぜひ、ブルノへお立ち寄りの時は上演されるかチェックしてみてください!


「金のさかな」日本初上陸!

ファイル 68-1.jpg「金のさかな」日本上陸!

「金さかな」が、北九州市門司港の海峡演劇祭2012にて、11月17日、18日、19日、上演されます!
日本初上陸です!

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「Dynamo」プレミア公演!!

ファイル 65-1.jpg2012年11月10日、KD Mlejn劇場(プラハ5区)にて、舞台美術、衣装デザイン担当した「Dynamo]がプレミア上演されます!
振り付け・演出は、世界的に活躍するアクロバテイック・ダンサーの>イロナ・ジャンティ氏(フィンランド)です!

11月は、プレミアも合わせて5回上演されますので、プラハにお住まいの方はぜひご覧になっていただけると嬉しいです。

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チェコ語ですが、プロジェクトに対しての私のインタビューが掲載されています。>インタビュー

また、プロジェクトとして記事が各方面にでています!
>記事・1

>記事・2

>記事・3

>記事・4


『金のさかな』『Yodaka』東欧ツアー2012 終了しました!

ファイル 64-1.jpg更新が遅れてしまいましたが、無事に『金のさかな』『Yodaka』東欧ツアー2012は、10月12日コシツエ人形劇場(スロバキア)での上演をもちまして、無事に終了することができました!『金のさかな』は、チェコにて4回公演。『YODAKA』は、チェコースロバキア通して5回上演することができました。詳しくは、ブログを読んでいただけると嬉しいです!
>blog

現在は、11月10日プレミア予定の『Dynamo』(プラハ・Mlejn劇場)、11月18日に劇場プレミア予定の『金の紡ぎ車』(ブルノ・Studio Marta)、1月10日プレミア予定の『親指姫』(ブルノ・ラドスト劇場)を準備しています。舞台美術、人形制作・デザイン、衣装デザインで参加しています。

こちらの方も、少しでも多くの方々に見ていただけるようがんばりたいと思ってます。


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