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「きんいろの髪のお姫さま」

ファイル 308-1.jpgファイル 308-4.jpg先週プラハへ帰ってきました。今回の日本滞在は6週間と結構長く、かーーーなり濃いものでした。そこそこ体力はある方だと自負していたのですが、今回ばかりは一時停止といいますか、渦中にいる時にブログを書きたかったのですが、全くもって手につきませんでした…。

改めて書き出すと、事後報告的な内容になってしまいますが、今回の滞在は、大きくわけて3章から成り立つ内容だったなと…。

第一章は、『ペトル・マターセク追悼展-人形劇の革命児が遺したものと受け継ぐ者-ペトル・マターセク、佐久間奏多、林由未』でした。日本到着後翌日からの、長野県飯田市の川本喜八郎美術館での展示の撤収から始まり、東京飯田橋パペットハウスさんにおける展覧会。

第二章は、マターセク夫人のヤナさんと、私の旦那のペトルとの日本旅行。マターセク氏に縁やゆかりのある地や人達に会う「巡礼の旅」から、後半は金沢から旦那が運転する車で飛騨高山・長野を通りながら、日本の山々、自然や秋を感じつつ、横浜に帰ってくる旅をしました。ここまででも、かなり濃かったのですが…。

最終章は、九州プロジェクトでした。色々ありすぎて、第一章と第二章の記憶が飛んでしまうほどの内容でした。メインは、新作人形劇『きんいろの髪のお姫さま』を作りあげて初演公演することでした。

この企画の始まりは、いつ頃だったか…。よく、チャークさんとは新作劇のアイデアを定期的に話し合うのですが、昨年あたりから具体的に九州でのプロジェクトが決まり、本格的に話合いを重ねてきました。が、タイトル選びがとにかく難航しました。日本の民話から、動物を主人公にした昔話のオムニバスから、色々なタイトルがあがりましたが、なかなか一つに絞れませんでした。かなりの時間を議論に費やしましたが、最終的に、演出家のゾヤ・ミコトバーさんの鶴の一声で、『きんいろの髪のお姫さま』に決まった次第でした。

本作品と同じ原作作品を、私自身は、2014年にゾヤさんとは一度ランピオン劇場(チェコ)で制作しています。1回作っているし、やりやすいかな?とは、一瞬たりとも思わないタイトルに決定した瞬間でした。話自体は凄くいいお話なのですが、壮大な話すぎてソロ・パフォーマンスには向いてなく、できればやりたくない!といったタイトルで…。登場人物が多く、場面転換が多く、シーンが繰り返すけど省略するのは話の筋上厳しい…かなり難しい物語なのです。

ランピオン劇場の時は、役者2人(+部分的なバックサポート1人)、と演奏家の4人で構成されていました。2人で演じるにしても、かなりの舞台転換とテキスト量で、ランピオンの役者2人(DAMU・チェコ国立芸術アカデミー劇場学部出身の優秀な役者二人でしたが)をもってしても、今まで演じてきた作品の中で一番難しかったと初演後呟くほどでした。2人で演じるのもかなり難しかった物語を、ソロで!と、始める前から尻込みしてしまいそうでしたが、制作する前からゾヤさんは、チャークさんがソロで演じきれる姿が見えていたようです。さすがだなと。

『きんいろの髪のお姫さま』は、伝承物語として位置づけされていますが、私とチャークさんの間では「物語というよりは、大河ドラマ!」と、全く意味わからない陰口をたたいていました。とにかく、この壮大な話を、どうソロ・パフォーマンスに転換していくことが課題、いや、戦いでした。プレミア公演があけてから、ゾヤさんを交えて『きんいろの髪のお姫さま』をソロでやりきった人は、チェコでもそうはいないのではないかという話になり、ゾヤさんの知る限りいないとのお言葉が…!!

同じ作品を制作した身分で、同胞を褒めるというか、戦友を褒めるのは、内輪盛り上がりになりかねないので避けたい話ですが、全て終わってみて振り返ってみると、やはりチャークさんは凄い人だなあと。とにかく九州プロジェクト、役者として、企画者として、母として、全部ひっくるめて全力疾走どころでない疾走でした…。

そんなチャークさんとの出会いは、2009年にチャークさんが文化庁新進芸術家海外研修制度でチェコに来た時でした。その時に、今回大分県宇佐市西本願寺四日市別院で上演された『YODAKA』を一緒に制作しました。最終演出には、ゾヤさん。同メンバーで2012年には『金のさかな』。今回の『きんいろの髪のお姫さま』は、3人で制作する3作品目の作品になります。

私とチャークさんは、伝えたいもの、感性、哲学的なもの、感覚的なものは近いほうだと思うのですが、とにかく性格、考え方、物事のとらえ方が微妙に違うので、いつも、まあ、かなりの議論になります。時には、強靭なダイヤモンド鉱石を感じさせるほどの頑固さに眩暈を感じますが、最終的にはその恐ろしいまでの粘り強さが、作品完成に欠かせない1ピースに辿り着く一手になったりするので、その辺りも凄いなと。

こうした日々を経て、チェコに帰ってから数日が経ち、ようやくブログが書けるテンションまでに復活できました…。今回の日本滞在の最終章は、灰と化すような現場でした。今までも美術家として、そこもとに死線を色々潜り抜けてきたとは思います。なので、「制作」におけるちょっとやそっとの無理は、結構耐えられる方だと思うのですが、今回は、美術家としての許容量を遥かに越えることがとにかく一杯あった感じでした。それらが、灰化させる原因だったかなと。また、その事は、後日書ければですが…。

ファイル 308-2.jpg私の九州入りは今月8日からでした。5時起きで羽田空港に向かい、朝9時には北九州に到着し、そのまま、展覧会搬入するといったスケジュールでした。10月9日から14日まで、小倉にある隠れ家的なギャラリー、UMIE+で『林由未人形展』を開催させて頂きました。

展覧会開催中は、会場にできるかぎり在廊する予定だったのですが、今回は搬入が終わった後、すぐに新作人形劇『きんいろの髪のお姫さま』のセット・人形の最終仕上げ+リハーサルで、ほとんど会場にいることができませんでした。そんな状況すらも、全力でサポートしてくれたUMIE+のオーナーのえみさんには本当に大感謝です!

宣伝から接客、上演の際は、設営、客入りなど諸々、えみさんなしでは初演を迎える事は不可能でした。先の先の5手の先を読まれているというか、本当に仕事がめちゃめちゃできて、カッコいい美人オーナーさんでした。ぜひ、福岡・北九州在住の方は行ってみてほしいです。素敵なえみさんに会うだけでも十分行く価値ありますが、セレクトされている商品に品があり、本当に凄く素敵なお店です!私も、Made inフランスの先割れスプーンを購入し、チェコで使い始めています。スプーン自身もフランスから日本へ行って、またチェコへ戻ってくるとは思っていなかったかなと。

12日から、ゾヤさんが合流し、13日14日のUMIE+でのプレミア上演を無事になんとか迎えることができました。驚いたのは、両日ともチェコ人のお客様が!楽しんでくれたみたいだったので本当に良かったです。まさに、『Zlatovlásk(きんいろの髪のお姫さま)』だったよ!!!との感想も頂けました!UMIE+での上演は、かなりキューキューな狭さで見て頂く形になりましたが、観客の皆様も暖かくアットホームな本当に濃い上演になりました。

ファイル 308-3.jpgファイル 308-5.jpg次の日は、大分県宇佐市に移動。さらにその次の日から3日間連続で、午前中は保育園でワークショップ。午後はリハーサル。18日、19日は、歴史あるお寺・大分県宇佐市西本願寺四日市別院での『YODAKA』上演。20日、21日は宇佐市民図書館にて『きんいろの髪のお姫さま』の上演と盛りだくさんでした…。上演においては、搬入、場当たり、リハ、本番、撤収と2作品の上演があったので、かなり慌ただしかったです。

西本願寺四日市別院は、九州最大級の木造建築で、由緒あるお寺です。「命」を題材にした『YODAKA』を、歴史ある神聖な空間で、上演できる機会に立ち会えたのは本当に感慨深かったです。本堂の脇奥から音響をしていたのですが、上演風景は儀式にも似て、本当に忘れられない情景でした。疲れを吹き飛ばすような光景でした。このような機会を作って頂いた、僧侶の井上さんに本当に感謝です。

そして、一番感謝をしなくてはいけなのが、チャークさんの旦那さんであり、北九州市にある家具屋さん501 furnitureの経営者でありデザイナー・制作者である圭君。『きんいろの髪のお姫さま』のざっくりした私のデザイン画を親身に図面に書き起こし舞台の制作を全てしてくださいました。さらには、上演にあたっての、搬入搬出、お客さん誘導から、子供の面倒から、ご自身も展覧会がぶつかっていて多忙極まりない時期にもかかわらず、全力で全面サポートしてもらいました。さらには、その圭君のご両親。

ご両親は、今回の九州企画の立役者であるふるさと作家作品展実行委員会の実行部隊的な立場にあり、感謝の言葉が見つからないぐらいにお世話になりました。ご両親のおかげで、1週間の宇佐滞在でしたが、宇佐という土地が本当に大好きになり、また、いつか訪れたい!!!という気持ちで一杯です。

諸々書きこぼしがありますが、また気力がありましたら、後日デイテールを書けたらなと。私のブログは長文になりがちですが、今回のブログが、恐らく今までで、一番長いのではないかなと思います。長文駄文お付き合い頂きありがとうございました!!!!

写真・1 「きんいろの髪のおひめ様」のイジ―と舞台
写真・2 「きんいろの髪のおひめ様」悪い王様
写真・3 UMIE+での展覧会風景
写真・4 「YOADKA]の上演シーン
写真・5 チャークさん、ゾヤさん、私

写真漫画は、インスタの方にもあげていますのでぜひご覧ください!