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「Memory Hole」

ファイル 291-1.jpgファイル 291-2.jpgファイル 291-3.jpgファイル 291-4.jpgファイル 291-5.jpg日本におけるチェコ文化年、シアターΧ25周年企画「ペトル・マターセク追悼企画」で、11月2日から16日まで、日本に一時帰国していました。2週間の間に、マターセク教授が美術を手掛けた作品「命の歌」と「ピノキオ」の上映。シアターΧにて10日間にかけて行われたワークショップ「Memory Hole」と成果発表、ワークショップにて一緒に講師をしたアントニーン・シィラル氏の監督作品「Menandros & Thaïs」の上映など盛りだくさんでした。

かなり濃い2週間だったので、どこから書いていいのかわからない状態です。が、第一に予期しない形で、マターセク氏のワークショップという企画から、氏の追悼企画になってしまい、時間のない中で、チェコセンター、シアターΧのスタッフの皆さんを初め、多くの人の協力を得て形にすることができました。この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。

「Memory Hole」
10日間かけてシアターΧにて、行われたワークショップです。色々と本当に大変でしたが、代えがたい経験になりました。マターセク氏の発案があってから、実現するにあたり2年近くの時間が経ってしまい、さらには、氏の不幸があってからは、実際にこのワークショップをする意義を考えなくてはならない事態になりました。その際、シアターΧの芸術監督の上田さんより「マターセク氏に学んだ生徒として、氏の意思を引き継いで、ワークショップをしたらどうか」との強い発案がありました。私一人でマターセク氏の代わりにワークショップを引っ張ることは難しいと思い、DAMU時代に同級生で、私とは全く違う方向性の舞台美術をやっているアントニーン氏に協力を得る形で話を進めていきました。

アントニーン氏とは、学生時代から知っているので10年以上の知り合いですが、こういう形でタグを組むのは初めてで、2週間かなり話し込むことになりましたが、ここまで長いこと深いこと話したことはなかったので面白かったです。興味のある方向性、活動の場は、ちょっと違いますが、演劇における仕事の仕方、哲学、物事のとらえ方は、ペトル・マターセクという同じ親・師を持った共通点といいますか凄く似ていて、一緒に組んで仕事をするのにズレがなくとても楽でした。とても頼りになり、多くの刺激をもらう形になりました。

ワークショップのタイトル「Memory Hole」は、マターセク氏が1年半以上かけて決断した言葉でした。決断にいたるまで、かなりの読書家のマターセク氏ですが、イタリアの小説家イタロ・カルヴィーノやヤロミール・エルベン、フランツ・カフカなどチェコを代表する作家の作品、「古事記」を初めとする日本の伝説や昔話まで、かなりの本を読まれました。

マターセク氏とのワークショップに関する打ち合わせはかなりの時間を費やし、ひな形も制作しましたが、実際に私とアントニーン氏がその意思を引き継いでやるとなると、氏が考えたものをベースにし、自分たち自身で考え直さなければならない点が沢山ありました。それでも、マターセク氏が決めたタイトルに関しては、私もアントニーン氏も両者即決でこのタイトルを残そうとなりました。

本ワークショップの、私自身のコンセプトでは、マターセク氏の教え「人 自身 他者、人形 物体、メディア、空間、視点、ループ 関係性、時間、光」それらを総括して考えること-を基に、ミニDAMU(チェコ国立芸術アカデミー劇場学部)を再現することでした。毎日テーマを決め90分間の講義、そのテーマにそった90分2回の実技をすることでした。テーマを決めて講義をすることで、自身の仕事を介しながら、マターセク氏から学んだことを。実技では、コンセプト、「First impression」のイメージやアイデアスケッチ、ストーリーボードなど、実際にアイデアを人に絵で伝えることから、アイデアの実現化―チェコで日常に繰り広げられているリハ風景、制限された物の中でどれだけアイデアが出せるか、形にしていけるか、「アイデアの即興性」を体感体現することを目標にしていました。

時系列を追って書いていきたなと思ったのですが、到着した2日のことを思いだすとかなり昔のことに感じてしまうぐらい濃い2週間でした。それでも、10日間という長いワークショップ。会社で働かれている方もいたので、参加するにはもの凄く難しいスケジュールでしたが、本当に個性豊かな人が集まり、10名の参加者さんの全員、私もアントニーン氏も涙がホロリと出てしまいそうなぐらい、全力でついてきてくれました。

さらには、ワークショップという形で10日間は長いですが、実際に成果発表という枠で何かを掲示するには、10日間ではかなり短いのも事実です。「Memory Hole」というかなり抽象的な言葉から得る各参加者さんの個人のイメージ。実際の記憶。そういった物を探りながら、全体で繋げていくこと。時間、技術面、素材等、多くの制限があり、その中でどう作り上げていくかも大きな課題でした。実際に成果発表の当日に出来上がったシーンも3か所ぐらいあり、通してできたのは1回。そんなプロでも困ってしまうような環境下でも、皆さん堂々とむしろリハーサルの時よりも生き生きしてやられている姿を見て、本当に心がドキドキしました。演劇の持つ不思議な力だなと。

また、個人の繊細な記憶部分にかなり関わりのあるテーマだったこと、10名という人数もあり、かなり密にコミュニケーションすることができました。最後の方は感覚共有といいますか、アントニーン氏のチェコ語を、参加者さんが理解する瞬間が多々あり、逆も然りで面白かったです。

長々となってしまいました。書いても、書ききれない濃い体験でした。若輩者ですが、講師という形で10日間やらせてもらえる機会を得て、実際に多くを学んだのは私やアントニーン氏だったのではないかと思います。日本にいる間、マターセク氏の存在を感じる瞬間が多々あり、全ての物事ひっくるめて、氏からの最後の課題だったのではないかと感じずにはいられませんでした。どういう形でできるかわかりませんが、マターセク氏から学んだことは、私自身の人生の中で誰かに伝えいかなければと思っています。

そして、今回こういった形でワークショップの機会を用意してくださいましたシアターΧの皆様、チェコセンターの皆様、ワークショップ中、多大な協力をしてくれました通訳バーラ・シェフチーコヴァーさん、アントニーン氏の映画「Menandros & Thaïs」の字幕を訳してくれた川島さよ子さんを初め、本当に多くの人の協力により今回の企画が成立しました。重ね重ね御礼申し上げます。

気持ちが、フワ――――っとしていますが、来週、プラハで2年に1回開催されている第4回国際アート・ドール展覧会に参加します。11月24日から26日まで、Slovanský dům (住所:Na Příkopě 22 PRAHA 1)にて。会期中会場におりますので、ぜひぜひお越しください!!世界中から、著名な人形作家さんが大集合されます!詳しい情報はこちらより!(>web